2013年5月18日土曜日

ダメ、絶対! 覚醒剤と安売り

どもっ!インパクトマーケッターの福谷です。


お客の心を揺さぶり動かす販促アプローチで、ライバルとの「違い」を認識してもらう事が顧客反応率を最大に引き上げるという話をしていますが、お客様に与える「インパクト」にも様々な種類があります。


回を追って具体的な話をしていきたいと思っていますが、その前に今回は、「お客にとってインパクトはあるけど、絶対にしてはいけない戦略」の話をしたいと思います。


その戦略とは「価格戦略」、今回ここで言う価格戦略とは基幹商品の一時的な薄利多売の低価格戦略、「値下げ」の事です。


チラシでもCMでも、低価格戦略は当たり前のように目にします。

お客様を呼び込む方法の中で一番簡単に思いつく方法、または一番安易に手を出してしまいがちな方法(笑)は、間違いなくダントツで「値段を下げる」というプロモーションです。

あなたの商品がなかなか売れない時、とりあえず手っ取り早くお客様が欲しい時、「値段が安けりゃお客様が振り向くかも」と考えてしまいがちですよね。

チラシにデカデカと「激安!○○円!!」と書けば確かにお客様は振り向きます、その文面がお客様に与えるインパクトもおそらく最高でしょう。

大企業が様々なメディアを駆使して当たり前のようにやってる戦略なので、余計にその手法に疑問を感じ難いのかもしれません。


「やっちゃダメです」

その戦略に舵を採ったら最後、途中であわてて中止してもしばらくの間は後遺症が残るくらい、あなたにはツラい蟻地獄に陥る事になってしまいます。


実は私、大学を出てからの13年間をマクドナルドの社員として過ごしていました。

当時のマクドナルドは、外食業界では一番派手な低価格戦略を採った企業です。

今回はその経験を踏まえ、低価格戦略を行う企業を内側から見てみましょう(笑)

皆さんは、現在繰り広げられている牛丼屋の値下げ競争などを思い浮かべながらお読み頂ければと思います。



先程も書きましたが、低価格戦略というのは一番簡単で、しかしお客様には強いインパクトを与える戦略です。

その販売戦略を採用する時に企業の「偉いさん」が、その戦略を正当化する為に必ず口にする理由があります。


「価格をさげても、その分お客が増えれば問題無い」というのがそれです。

「いつもお客様が買う商品に、プラスワンでその安売り商品を買って貰えばいいんだ」というのもあります。


確かに当たってはいます、理屈の上では。

しかし、実際にふたを開けてみると、決してそうはなりません。


価格を下げるという事は、原価率が上るという事です。

今まで50円の材料で作ったハンバーガーを200円で売っていたとして、それを100円で売れば原価率は「2倍」です。

実際は他の商品も売れるのでトータルでは2倍にはなりませんが、その「激安商品」を集中して売るわけですから、全体の原価率は大きくアップします。


原価率が上るという事はブレイク・イーブン・セールス(損益分岐点)が上る、という事になります。

今までと同じ売り上げだったら当然利益が半減してしまうわけですから、割引前の利益を超えようと思ったら、売りまくらなくてはいけません。


最初は簡単なんです、お客様はうなる程押し寄せます。

しかし、安売りを終えると潮が引くようにお客様はその場を去ります。

安売り前に戻るのではありません、客数は「安売り前よりも減る」のです。


実はこれ、不思議な現象でも何でも無いのですが、低価格戦略を採りたがる人は何故かこの事態を事前に想像する事ができないのです。

プロモーションとしての安売りが終わったら、プロモーション前の売り上げに戻るだけだと思っています。


とんでもありません。


何故なら、一度商品が安くなった事を体感したお客は「本来の価格が高いもの」だと認識し始めるからです。


安売り期間を終えて売上が落ちた企業はあせります。

「もう一度お客を呼び戻さないと!」と、次に採った対策が


「安売り」です(笑)


しかし、今度は前回ほどは売れません。

何故でしょう。


このブログをお読みになったあなたはもうお分かりだと思います。

そう、お客はその価格を提示される事に「慣れてくる」のです、この戦略で唯一有ったインパクト、刺激材料の効果が早くも薄れてきてしまいます。


あせった販売者はお客様を呼び戻す為、よりインパクトのあるプロモーションを考えました。


「もっと安くする」


もうねぇ、泣いてまうわ。油断して聞いてたら枕を涙でぬらしてしまうトコやわ(笑)


規模の大きい会社は特にですが、会社の業績は利益よりも売上で対外アピールをする悪習があるので、対外的には売上を伸ばしているかに見える事が多いのですが、利益はボロボロ、大変な減益です。

手間が掛かるが儲からない、どんどん営業効率が落ちていく、単価が下がった分製造量を増やすので現場の従業員は疲弊し、モチベーションも下がるわけです。


商売で一番大事なのは「利益」」です、「売上」ではありません。

売上10億で利益1億の会社よりも、売上5億で利益2億の会社の方が、会社の仕組みとしては「良い」のです。


そして、実はこれが何より重要でやっかいな事なんですが、安売りを続けるとお客様の「質」が変わってきます。


少なくともお客様をあなたの仕事の財産だと考えているのであれば、安売りに釣られて来るお客様を「一生のお客様」だとは考えない事です。

何故なら値段だけをメリットにお客様を呼び寄せる事で、あなたのまわりに集まるお客様は、値段だけがあなたとの繋がりになってしまうからです。

安売りを始めると、あなたが扱う商品の質や、「あなたという販売媒体」の質を気に入って購入して下さっていたお客が目に見えて減少します。

しかも、安さ目当てで集まったお客様は、あなたが提示する価格より1円でも安いライバルが現れたら、何のためらいも無くあなたから離れていきます。

金の切れ目が縁の切れ目。

安売りを歓迎するお客様の「永遠のリピート」が欲しいなら、あなたはこの先永遠に「価格を下げ続ける」必要があるという事です。



あなたが集めなければならないのは、あなたが提示するディスカウントプライスにだけ反応するお客様ではありません、最安値なんかじゃ全然なくても「あんたが勧めるモンやったら買うよ」と言ってくれるお客様のはずです。

安易な安売りで手っ取り早くキャッシュを手にするのと引き換えに、今まであなたの前にいたお客様の寿命を縮めるくらいなら、あなたやあなたの仕事を信頼してくれるお客様を探し、たとえ即効性が無くてもお客様と一生涯の信頼関係を築きましょう。



その薬、打つと即効で元気になるけど切れたら前よりグッタリしてくる、「ヤバイ」と思ってもう一度打つと元気になるけど前ほどは効かず持続もしない、身体がむしばまれていくのを感じるけど他に元気になる方法が浮かばないので、とりあえずその日グッタリして見えないようにする為だけに薬を打ち続ける。


この薬が、あぶく銭欲しさに手を出す「無計画な安売り」の正体。

2 件のコメント:

  1. 安さに惹かれてくるお客様ってリピーターにはならないですよね(^^;;
    売上が上がっているのに資金繰りにキュウキュウしている会社沢山あります。
    輪をかけて経営者は売ることに必死で「なんでお金残らない?」
    原因が分からないから重症です。
    僕のように売上が上がってなければ別ですが_| ̄|○
    麻薬、魅力的ですよね!
    情報商材にはまる起業家も気を付けてね!(ーー;)

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    1. 吉兼さん、おはようございます。
      安さを最前面に押し出して販売し、それに反応するお客様は、品質や応対の丁寧さに対する重要度が低い方々である傾向が高いですので、その方々をつなぎとめるには「常にトップクラスの安さ」を提供し続ける必要がありますし、薄利多売を乗り切る相当な覚悟や資本、社内の仕組みが必要です。
      そこで頑張るくらいなら、お客様との関係性を深めて、値段ではなく購入する相手を選ぶお客様を育てた方が、単純に商売として「やってて楽しい」ですよね(笑)

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